nekoluckのブログ

サスペンス小説

結婚

それは間違いないと言う
彼女が言うのならそうなんだろうけれど
それなら、いったい誰が犯人だと言うの?
黙ってしまった私に、与那嶺さんは


「答えは明白だと思うけれど」


「え!?」


「あなた、ご主人の過去を知ってるのかしら?」


少し冷たい声でそう言われた


優雅の過去!
いや、まったく知らない
結婚するときにバカ者のように恋にどっぷりはまって
この人にどんな過去があろうとかまわない!
30の時に子持ちでバツイチだった私なのに
少女のような気持ちで優雅と結婚したのだ
優雅ののらりくらりとわけのわからない性格は
今でも変わらず
その頃のもバカだったのだけれど
私は頭がどうかしていたのだろう
私のほうからもうプッシュしたのは間違いない
結婚した後に実家のほうにも行った
父親はなくなっていたが、立派な家で
母親は毅然として素敵な人だった


彼もバツイチなのは知っていたが
それを取り立てて考えもしなかった
連れ子の翔の心に寄り添えるよう
そして教育に一生懸命で
優雅のことなど、その後深くは考えなかった
恋は結婚後三か月で冷めていたのだから

結婚

驚いた!
その優雅がわからないと言う
なんだか、気持ちが悪い


それでも、あと、死ぬのって
優雅、うちの夫だけだ
だいたい、10万円くらいで
三人で10万円なのだから
一人頭3万3千円?!
それでその、大事な情報を売るやつも売るやつだが
だいたい、支店長である信也と孝也の父親が一番情けない気はする
そんな軽い情報を買って
まんまと銀行強盗を成功させたあの二人は
まぁ、運がいい


その情報を流した人間がほとんど死んでいる
そんな軽くてバカバカしいほどのことなのに
私にはそんな気がしてならなかった
とりあえず、このことの報告に与那嶺さんの所に行く


信也も孝也もまじめに頑張っていた
私は安心して
あんな馬鹿な父親を持ったばかりに
可哀そうな子供たちだ
そう感じるのも可愛そうだけど


「お帰りなさい
岡山まで行ってきたんでしょう
どうだった?」


それで、すべてを話し
後、殺されるとしたら夫だけなのだけれど
殺していく人間が見当たらない
いったいどうなっているんだろう
私はもう一度、長沢祐樹が本当に歩けないのかを聞いてみた

結婚

どういうこと?
舞さんまでも殺した犯人
いったい誰なのか?


優雅としゃべるのもうんざりだが


「あれから、誰も事故にあわないね」


すると、少し笑った
こいつは嘘つくときこんな笑い方をする


「もう、誰も死なないんじゃないかな」


その言い方は自信に満ちている
そして、いやな予感がした


「どうして?」


少し、また、笑った
それから


「わからないけどね」


驚いた
優雅は「わからない」という言葉を言えない人だ
いつだって、馬鹿なことをした後に
「どうして?」と半ば切れながら聞くと
わけのわからない理屈をつけて小学生並みの答えを出す
いや、小学生だって頭のいい子は事実に沿った答えを出すのに
彼はそこにはそぐわない
とんちんかんな答えを出すのだ
「どうして、そんなに服を買うの?」
「だって、乾かないから」
一見、間違いなさそうに思えるが
私は洗濯魔で、大きなバスタオルだって
その日のうちに乾かして夜には昨日と同じように並んでいる
世間一般では「乾かないから」は正解かもしれないが
うちに限っては違うのだ


事実に基づいた会話ができない
そのくせ「わからない」と言えない
わからないことをわからにと言えるのは
大概頭のいい人で
悪い人ほど言えないのだ