与那嶺さんは全く違う話を始めた
「私ね最初から一生独身でいようって思ってたわけではないの
今から20年くらい前まで
付き合ってる人がいたのよ」
20年前と言えば与那嶺さんが60くらい?
今の私くらいだろうか
「29歳の時に知り合って
59歳で彼が死ぬまで恋人同士だったの」
「結婚はしなかったんですか?」
「ええ、出来なかったわ
もちろん、親が賛成するような人でもなかったし
彼は一年も私に会いに来ないこともあったから」
いったい何が言いたいんだろう
もちろん、与那嶺さんにもそんな思い出はあるだろうし
今じゃなければ是非聞いてみたいことだけど
「あなたの年なら小学校の頃の
連合赤軍とか浅間山荘事件は覚えているでしょう?」
それはもちろんだ!
田舎の小さな村の小学生だった私にも
あれは衝撃的な事件で
テレビでずっと放映されていた
頭の悪くて単純な母親は
「大学まで行ってこんな大変なことをしでかして
あんたたちは東京の大学なんか
絶対に言っちゃいかんよ」
そんなことを言っていた
実際、それがもとで私は大学に行くときに
ひと悶着起こるのだが
それはまた、それで時代だったとしか言いようがない
「私の好きだった人はあの連合赤軍の仲間だったの」