nekoluckのブログ

サスペンス小説

結婚

「勇気はなかったけれど
公安に十分目をつけられていたの
それに、一度道をそれてしまうと
彼は学問には興味を失っていたし
就職は無理だし
親族はそろって結婚には反対するし
彼の家のほうは息子が赤軍派だったってだけで
工場は倒産して一家離散
そういう時代でもあったんだけど


ああ、そうかもしれない
『総括』とか言って確か多くの殺人もあった
浅間山荘事件よりもそっちのほうがすさまじかった


「彼と私はそれでも別れることができなかったの
一年に一度くらいしか顔を見せない彼に
私はただただ、一途な愛情を持っていたの
でも彼は途中から逃亡に疲れ果てたやくざのような男になって
私を金づるとしか思っていなかったのよ
それでも、私はよかったんだけどね
20年前から彼は私のもとには来なくなったの
もしかしたら死んでるのかもしれないし
国外に脱出して帰ってこないのかもしれない」


そんなすさまじい恋愛をしていたなんて
今の与那嶺さんからはとても思えない


「ずっと、父母を心配させて
結婚もせずにこうして一人ぼっちになってしまったのだけどね
私、ずっと、一人じゃなかったのよ」


ん?