結婚
炬燵に座って、紙コップに 横にキレイに置いてあるウーロン茶のペットボトルから お茶を入れてくれた 炬燵の上は奇麗に片付いていて何もなく そのペットボトルの横に小さなタッパーがあり そこにお菓子や食べ物が入っているようだった 普段、家での生活はいざって回れば大丈夫なんだと笑った 私はすぐにクッキーを... 続きをみる
足立区の小さな一軒家 古い! いや、ぼろい! 確かにこれではあの兄弟を助けることはできなかっただろう そう思いながらベルを押した このベルもなるかどうか心配なレベルだったが ブーとしっかり鳴った しばらく待つと中から低い男の声 「どなたですか?」 低いけれど、優しそうな声だった 「あの、森本君たち... 続きをみる
そのうち二人が帰ってきた 二人はテーブルの上の紅茶よりも 与那嶺さん手作りのクッキーを 嬉しそうに食べている ずいぶんたくさん焼いたものだと思っていたら 彼らのおやつだったのだ あの、池袋で会った兄弟とは思えないほど 幸せそうだ 「そういえば、あの頃やってたバイト 誰からのお世話だったの?」 「お... 続きをみる
もっと、詳しい話が聞きたくて 私は久しぶりに信也たちを預けた与那嶺さんの所に行ってみた 昭和の初期に建てられたような古風な家だ 与那嶺さんのご両親は大正生まれで この家は新婚の時に与那嶺さんの父親が 結構な財産を相続して建てたらしい 与那嶺さんはこの家で蝶よ花よと育てられ あまりにも純粋すぎて結婚... 続きをみる
一人死んでいる 事故? 私はすぐにその事故を調べ始めた 夫とは口も利かないほど疎遠にはなっていたけれど さりげなく聞いてみる 「だれか仕事仲間が亡くなったの?」 日ごろほとんどしゃべらない私の質問に驚いたように 「ああ、敬さんがね 前から酒のみだったけれど 二週間ぐらい前に酒飲んで川に落ちたらしい... 続きをみる
母親が教育熱心で信也はもちろん 孝也も小学五年にしてはかなり先取り教育をしていた 二人と話していると、これはもったいない そう思わされることが多々ある 私は知り合いがやっているNPO法人 何とか援助してくれる金満家 色々調べてみた 二人で生活しながら学校に行く それもできないことはない 独身女性の... 続きをみる
その時になっても実際に夫が命を狙われているなんて 信じてはいなかった もちろん、数度の奇禍はあったが 夫、優雅という人はいかにもそういう人なのだ 一番大事なのは家族より自分自身 それはそれで、生まれつきそういう人なんだから仕方がない それに対して何か思うことにはとっくにあきらめていたが やることな... 続きをみる
『おじいさん』 興味もないし、まったく嫌な奴なのだが 夫がそう呼ばれるのはショックでもあった でも、よく考えれば、私も60だし 彼らから見れば、立派なおじいさんおばあさんなのだろう それに孝也は尾行しているおじいさんの妻が私とは知らないのだ そういわれると、夫のような年寄りが尾行されたり なぜ命を... 続きをみる
「親がある夜、二人ともいなくなって 次の日の夕方、二人の遺体が北海道で見つかった それがすべてでした どうしてそうなったのか全く分からなかったんですが どうやらすごい借金があったようで 自殺でした とにかくわかったのは、自分たちにはお金がないってことだけです」 それは過酷な経験をしたものだ だれか... 続きをみる
森本信也 それがその男の子の名前で 弟は孝也 驚いたことにラインを交換した次の週 信也から連絡があった 弟の孝也がこの前私がやっていたソシャゲーを ダウンロードしたいから 色々教えてやってくれ 施設ではスマホは持てないが 自分と会っている間はゲームをやらせてあげたいから そんな話だった 私は何とか... 続きをみる
「お兄ちゃんと一緒でいいねぇ」 「久しぶりなんだ いつもは施設にいて、ちっともおもしろくない とにかく大人しくして大人の言うことを聞け!って だから兄ちゃんが遊びに連れってくれるのは 一番の楽しみ おばさん、ゲーム好きにできていいなぁ 施設だと時間は短いし やりたいゲームは順番だし 早く兄ちゃんと... 続きをみる
小学生くらいの男の子 私は職業柄、そういう年齢の子は扱いなれている 翔が大学を出てから30代に入った頃、会社を興した その中に教育部門っていうところがあって 私はそこで家庭教師をしていたから 小学4年から6年くらいはお手の物だ 見かけた様子だけでも多分五年生だ そのくらいの男の子が好きなゲームはす... 続きをみる
私は夫に、その男の子のことは話していなかった SNSで彼らしき人を見つけた時も 何も言わなかった 今もその写真をスマホで見せて 「この、男の子、知ってる?」 そう聞いてみる 理由は言わない 「いや、知らないけど その人が何?」 本当に全く知らないようだった 私は彼に直接あたってみようか?! なんで... 続きをみる
夫がひき逃げにあった日から二週間 いや、もしかしたらひき逃げではないかもしれないが 毎日、見張ることはできない 仕事もあるし、私は夫の安全なんかどうでもよかった ただの好奇心と言えば、そうなのかもしれない 世の中は結婚について本当のことは語らない 嫌なら離婚すればよくて、離婚しない嫌な人のことは ... 続きをみる
顔はボケているが、その服装は 緩いパンツに白いラインが入っているところ 上のパーカーの色と大きさ そして、紺のニット帽 間違いなく彼だ 彼がここに写りこんでいる ハッとした 夫は今回は誰かに押されたなんて言ってはいなかった もう一度、念を押してみる 「ねぇ、誰かに押されたなんてことはなかった? 前... 続きをみる
その子を見かけてから、もう一度夫はけがをした 車に引かれそうになったのだ 怪我自体はいつものように大したことはなかったけれど 今回はひき逃げではないかと警察も調べてくれた 彼がひかれそうになった車は、真っ黒なハイエース 目撃者も何人かいて その車がものすごいスピードで逃げて行ったと言った 私も、本... 続きをみる
興味がないと言っても結婚したのは恋でもあった でも、よく言われているように三年もすれば そんな気持ちも消えてしまっていた 恋というような浮足立った気持ちがなくなれば ああ、彼は偏差値40くらいの人なのか これは営業職でネクタイを締めてっていうのは 多分彼にとってものすごく大変なのだ 子供たちが小さ... 続きをみる
外を一緒に歩くこともなくなった夫 その日曜日はたまたま買い物帰りの私と 前を歩く優雅の時間が重なった あ、優雅だ いやだなぁ、出来るだけ会いたくない 帰るの少し時間をずらそうかな そう思って、家の近くのコーヒーショップに入ろうと思うと その時に優雅をつけているような若い男がいるのに気が付いた つけ... 続きをみる
怪我は擦り傷程度 でも、また、誰かに押された そんなことを言っている バカバカしい 誰かが後ろから押したくなるような顔でもしてたんだろう その時になっても私は信じなかった それからも喋れば人をイライラさせるから ほとんど口も利かないで数か月が過ぎた 口を利かないと、夫との生活はほとんど接点がない ... 続きをみる
誰かを殺さなければ自分の目的が達せられない そんな人間はクズだし 頭の悪い奴だ 昔からそう思っていた 推理小説のどんな素晴らしいトリックを読んでも バカバカしいとしか思えなかった それが誰かのためでも どんなに大事な人を殺されたとしても 人を殺すのは極めて頭の悪い所業だ 私はそう思っている 夫、優... 続きをみる
「バスタオルって乾くのに二、三日かかるよね」 確かにほかの家ではそうかもしれない でも、うちでは絶対にないことで 毎日、夜使ったバスタオルは次の日の朝には乾いているし 天気が悪かったとしても 次の日の昼には奇麗にたたまれて バスタオル置き場に並んでいる その事実の前に、そんなことを言う 一事が万事... 続きをみる
それから30年間 夫の性格とか夫が持って帰るお金とか 全く興味がなかった 翔の下に夫との子供が二人 朱雀と環奈 末娘の環奈が大学を卒業するまで 子育てに夢中で夫が一体どんな人であるか 全く知らなかったと言ってもいいかもしれない その30年の間の17,8年は単身赴任で 一年に一度会うか会わない、そん... 続きをみる
私と翔は切羽詰まっていた 前の夫のDVから逃げるために 私は東京の地下に潜っていた お金もないし住む場所もない 住み込みの寮のある風俗で働いていた 何とかここから脱出しなければ それでも再婚相手は慎重に選んだつもりだった お金があるだけなら結構いたが 歳をとりすぎていたり 見た目が悪かったり 何よ... 続きをみる
若い、と言っても30はとっくに過ぎているが その彼女が頼んだハーブティーを飲むこともなく ほとんど怒りに任せて夫の浮気を私にぶちまける よく聞く話だ 職場の入ったばかりの新人 23歳で若くて尻軽女 夫の浮気は初めてではなくてこれで二度目 それでも別れたくはない 彼のことが好きでたまらない そりゃ、... 続きをみる