nekoluckのブログ

サスペンス小説

結婚

私は大概の人間のことは知りたい
好奇心旺盛でそれが全く利害関係のない人でも
過去は知っておきたい
ただ、夫だけは違う
それはどうでもいいと言うのとも違う
ただただ、苦々しい
自分の大きな人生の失敗を目の前に突き付けられるように
苦しみだけが残りそうで
彼の過去なんか本当に知りたくない


与那嶺さんの言葉の本当の意味なんて
全くわかっていなかった


最近の彼はお金もないし楽しいこともないのに
やたら明るい
気持ち悪い
とにかく金銭的には離婚は無理なので
遠くに、出来るだけ精神的に遠くにいる
でも、同じ部屋には住んでいるのだ


仕事に行く
バスに乗ってそれからJRに乗り換える
多くの人波の中
私は常に片手に本をもって動く
この大きな波の中
自分の世界だけに浸っていたい
そう思っていた
突然、背中に誰かの強い手を感じた
あ!!!!
横にいた若い人が


「おばさん!危ない!!」


電車が入ってくるその寸前
倒れ込もうとした私の腕を取ってくれた
心臓が止まりそうになる
ハッと振り向く
斜め後ろ、人ごみの中
誰もが電車に倒れ込もうとした私に目が集まっているのに
後ろ向きに逃げようとする人
間違いない優雅だ!