nekoluckのブログ

サスペンス小説

結婚

「いたけど、何?」


兼のほうが前に出てきた


「何か警察にでもチクろうってわけ」


私は子供をたくさん見てきた
五歳くらいで子供の人間性は固まる
だから、それ以上の大人であったとしても
五歳の子供と変わらない
そして、彼らは五歳の子供に見立てたら
相当頭が悪い部類の子供だ
でも、田舎者だからっていうわけでもないけれど
人の話を信じそうなところもある
私は意を決した
何より彼らには人殺しはできないと確信したから


「チクらない!
ただ、舞さんのことが気になっただけ」


「舞さん?!」


そう名前を出しても二人は何のことかわからないようだった
殺した相手の名前さえ知らないってことはないだろう
彼らは銀行強盗はするけど
やっぱり人は殺してないんじゃないか?


「そう、ほら、銀行の支店長の彼女だった人
『父ちゃん』で会わなかった?」


「ああ、あの綺麗な人か
あの人、支店長の彼女なの?」


ふみちゃんの兄ちゃんのほうが意外そうに言う


「てっきり、お気に入りの部下だと思ったよ
彼女っぽくなかったしなぁ」


「ああ、清楚な感じの人で
なんか、よかったよなぁ」

結婚

今までのことから考えると
彼らが銀行強盗に成功して
それまでの証拠隠しに銀行の様子を教えてもらった
あの、三人組のなかの吉永敬次と市田陽を消した
そしてそれに気が付いた支店長の愛人だった舞さんも手にかけた?!


この岡山から人を殺しに行ったのだろうか?
何を聞こうか、何を話そうか、もしこの男が
そんなに狂暴なのならば
うかつなことはできない


すると、後ろからもう一人出てきた


「おう、どうした?」


「あ、兼!このおばさんが、何か用みたいなんだけど・・・」


私はもう少し周りを調べるべきだったかと思ったが
この田舎だ
すぐに噂は回るだろうし
二人だって銀行強盗をしていれば
警戒するか、私を消すか・・・・


意を決して話始める


「東京にいたよね
もしかして、高尾のほうにいなかった?」


ふみちゃんの兄ちゃんののほうが真っ青になる

結婚

農協を出ると橋を渡る
小さな商店街があって横に抜けると
広い田んぼ
その広い田んぼの中にポツンポツンと
ビニールハウスがあった
真ん中あたりには牛を飼ってる小さな牧場もある


本当に私の田舎と同じだった
田舎から出てきて、何かいいことがあっただろうか?
あのまま、田舎にいて親の言うとおりの結婚をしてれば
今みたいなお金の苦労はなかっただろう
いや、人生のほとんどがお金の苦労で
くそみたいな人生だ
唯一の幸せは三人の子供だ
この子たちが家を出るまでは、どんなにお金に困っても
楽しかった
子供たちは三人ともすごく、きっとすごくと言っていいと思う
頭が良くて話していても話がいのある子供たちだ
独立して、これからは彼らの人生の邪魔をしないように
そう思っていた矢先に疫病神が帰って来た


頭が悪いだけじゃなくて心も腐っている
夫にはうんざりだ
それでも、夫にまつわるこの事故の真相を知りたくて
ここまでやって来た


農協の女の子に教えてもらったビニールハウスはすぐに分かった
そして、そこにはふみちゃんの兄ちゃんが咥えたばこで
もっさりと立っていた
この男が銀行強盗なのだろうか?


「おばさん、なんか用?」


さて、どうしたものか