「いたけど、何?」
兼のほうが前に出てきた
「何か警察にでもチクろうってわけ」
私は子供をたくさん見てきた
五歳くらいで子供の人間性は固まる
だから、それ以上の大人であったとしても
五歳の子供と変わらない
そして、彼らは五歳の子供に見立てたら
相当頭が悪い部類の子供だ
でも、田舎者だからっていうわけでもないけれど
人の話を信じそうなところもある
私は意を決した
何より彼らには人殺しはできないと確信したから
「チクらない!
ただ、舞さんのことが気になっただけ」
「舞さん?!」
そう名前を出しても二人は何のことかわからないようだった
殺した相手の名前さえ知らないってことはないだろう
彼らは銀行強盗はするけど
やっぱり人は殺してないんじゃないか?
「そう、ほら、銀行の支店長の彼女だった人
『父ちゃん』で会わなかった?」
「ああ、あの綺麗な人か
あの人、支店長の彼女なの?」
ふみちゃんの兄ちゃんのほうが意外そうに言う
「てっきり、お気に入りの部下だと思ったよ
彼女っぽくなかったしなぁ」
「ああ、清楚な感じの人で
なんか、よかったよなぁ」