nekoluckのブログ

サスペンス小説

結婚

妄想であったとしても
なんだか気味が悪い
私が思っているような頭の悪いずるい人間ではなく
もしかしたら完全犯罪だって成し遂げられる
頭のいい人間だったとしても
あまりに正体がわからなさ過ぎて
一緒の部屋で今までと同じように暮らしていくことはできない
今まで馬鹿にしていた夫が恐ろしい


私はその足で友人の家に行った
雅子は同い年だが独身で
結婚したことはない
大学の時からの親友で
お互いのことはほとんど知っている
仕事に邁進していて
荻窪にある一軒家も仕事一筋で手に入れたものだ
趣味のいい優しい家で
長いこと私の離婚を望んでいた


「ねぇ、一番下の環奈ちゃんが大学に入ったんでしょう
もう、子供のために一緒にいる必要はないじゃないの
離婚しちゃって
ここで一緒にすまない?
私、会社を辞めたら自分で何か始めたいの
紀代となら絶対に成功しそうだし」


6年前からそう言っている
でも、一番下の娘が大学に入ってからのほうが
夫はひどかった
バイトと奨学金で大学に通ってる娘から
お金を借りたり
家には全くお金を淹れない月が続いたり
雅子の言うとおりにしたかったのだが
なかなかそういうわけにもいかなかった

結婚

それに、公安が私をつけているのならば
当然、優雅にも四六時中見張りが付いているはずで
もし、優雅がこの一連の殺人を起こしているのならば
絶対、現行犯で捕まるだろう
そんな風に話すと与那嶺さんは


「公安は国家の安全のためなら
その辺の殺人犯は野放しにするかもしれないわ
その辺の殺人犯が五、六人を殺したって
国家が転覆するような一大事にはならないでしょ
どうせ殺されたのは庶民だし
それよりもテロリストを上げたほうが
公安にとっては正しい警察の仕事ってことかもよ」


上品んで物静かな与那嶺さんがそんなことを言う
いやいや、そんなことはあるはずもない
それに、私が思うに
公安がマークするような人間は
思想家と国の未来を憂えている人間とか
スターリンとかマルクス主義とか
イスラエルの過激派とか宗教的にやばい奴とか
とにかくもう少し頭がいい人間のはずだ


私は与那嶺さんの所から帰りながら
後ろを気にしたが誰かにつけられているなんて思えない
あれは与那嶺さんの妄想だはないか?
そんなふうに思わざるえなかった

結婚

「え!私に?」


驚いている私をよそに与那嶺さんは
落ち着いた様子で


「ええ、たぶん、40くらいに
そうね、私に言わせればいかにも公安ですって感じの
女の人だわ
多分、普通の人にはわからないでしょうけれど
私には何となくね・・・
私についている人も一人じゃなくって
何人も変わっていくけれど
わかっちゃうのよ
私、ほかにすることがないから
その辺ですれ違ってる人もよく観察する癖があって
間違いないと思うわ
あなたにも公安の人が付いてる
それで、思ったのよ
あなたはどこからどう見ても健全だし
公安に目を付けられる人じゃない
それなら、あなたの夫じゃないかって
長いこと単身赴任で一緒には暮らしてなかったんでしょ
その間に何かあったのか
もしかしたら、あなたと結婚する前に何かあったのかもしれないわ」


私は夫が公安に目を付けられるほどの人間とは思えない
でも、今の殺人が夫に関係しているのならば
そして、本当に犯人が夫なのならば
私の知っている人ではない
そんな能力があるとは思えない
いい人ではないし、ずるくて少し馬鹿ではあるけれど
まさか犯罪に関係してるなんて
思ってもいなかった